3 尊敬語
尊敬語は、その文の主体が行う動作・及び状態を敬語で表現することによって、その主体に対する敬意を表すものです。その主体が聞き手であれば、聞き手に対する敬意にもなります。また、主体以外に、能力・所有を表す「Nに」 に対しても尊敬語が使われます。
動詞を尊敬表現にするには四つの方法があります。 まずいちばんかんたんなのは、動詞を受身と同じ形にすることです。
書く → 書かれる 出る → 出られる 遊ぶ → 遊ばれる 生きる → 生きられる する → される 来る → 来られる
敬意を表したい人の動作をこの形にすれば、一応敬語になります。「一応」というのは、この形はあまり敬意が高くないと言われているからです。また、あとで述べる特別な「敬語動詞」のあるものは、そちらを使うのが正式です。 いる → ×いられる → いらっしゃる
もう一つは、「お(ご)-になる」を動詞の中立形につけて、尊敬を表す複合述語にすることです。
読む → お読みになる 利用する → ご利用になる 帰る → お帰りになる 心配する → ご心配になる
この本はお読みになりましたか。
田中さんはもうお帰りになったそうです。 多くの方がすでにご利用になりました。
原則的には「お-」は和語、「ご-」は漢語につきます。この形はほとんどの動詞に使えます。響きも柔らかく、学習者に勧めやすい形です。けれども、次のような語幹が一拍(かな一字分の長さ、一段動詞だけ)の動詞はこの形に なりません。
煮る → ×お煮になる
また、次に述べる敬語動詞が存在するものは、この形では使いません。
いる → ×おいになる (いらっしゃる) 言う → ×お言いになる (おっしゃる) くれる → ×おくれになる (くださる)
そのほか、外来語や擬態語にもつけられません。 ×おスタートになる
×おはらはらになる(はらはらする)
スル動詞は、「-する」を「-なさる」にするほうが自然な場合が多いようです。
運転する → 運転なさる ×ご運転になる 営業する → 営業なさる ×ご営業になる
[敬語動詞]
日常よく使われる動詞は、その敬語形として特別な動詞があります。
いらっしゃる: いる、行く、来る おっしゃる: 言う くださる: くれる なさる: する
(めし)あがる: 食べる、飲む ごらんになる: 見る お休みになる: 寝る
知っている: ご存じだ
「いらっしゃる」「めしあがる」のように、いくつかの動詞が一つの敬語動詞にまとまってしまうというのも面白い現象です。「寝る」の場合は、婉曲的に「休む」を使って「お-になる」の形にします。